2020.02.07
# アメリカ

「中流からの脱落」に怯える“おっさん”とポピュリズムの深い関係

彼らの深い深い絶望

日本においても、毎月のように嫌韓・嫌リベラルの記事を掲載する「保守雑誌」や、ベストセラーになった嫌韓本の読者は高齢層に偏っているとされる。新聞社の世論調査(朝日新聞2019年9月17日)でも「嫌韓」は高齢者に偏り、韓流やKポップの影響もあって18~29歳は「韓国が嫌い(13%)」よりも「韓国が好き(23%)」の方が2倍ちかく多い。

田中辰雄・浜屋敏両氏の『ネットは社会を分断しない』(角川新書)も、10万人規模のアンケート調査から「中高年ほど政治的に過激な人が多く、分極化している」と結論している。こうした日本の傾向も、ピンカーが描く欧米のポピュリズム政党支持者のプロフィールと整合的だ。

 

主観的な「貧困感情」が問題

マジョリティは社会の主流派、マイノリティは少数派で、アメリカでは「白人/黒人」、ヨーロッパでは「白人/(ムスリム)移民」の対立が深刻な社会問題になっている。欧米のような移民問題に直面していない日本では、「男性/女性」の対立を考えればいいだろう。政治家や大企業の役員を見ればわかるように、日本社会は「日本人」「男」「中高年」「正社員」「(一流)大学卒」という属性をもつきわめて均質なメンバー(おっさん)によって支配されている。

マジョリティの分断とは、本来は社会の主流派であるにもかかわらず、中流階級から脱落し、本人の意識のうえでは社会の最底辺(マイノリティのさらに下)に落ちてしまったと感じているひとたちが膨大に生まれる現象をいう。

その典型がアメリカだが、ここで注意しなければならないのは、アメリカ社会の最貧困層はいまも黒人やヒスパニックの移民などのマイノリティだということだ。彼らの窮状に比べれば、家と車、家族をもつ「プアホワイト」はまだ恵まれている(そのため所得分位では下位には含まれない)だろうが、客観的な貧困と主観的な貧困感情は別だ。

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