2020.02.07
# アメリカ

「中流からの脱落」に怯える“おっさん”とポピュリズムの深い関係

彼らの深い深い絶望

中流(マジョリティ)から脱落してマイノリティになるのではなく、マジョリティのまま貧困化していくとどうなるかを示すのが、ホワイト・ワーキングクラス(白人労働者階級)の死亡率が増加しているという奇妙な現象だ。

世界的にもアメリカ全体でも平均寿命が延びつづけているというのに、彼らの寿命だけが短くなっている。この驚くべき事実を発見したプリンストン大学のアン・ケースとアンガス・ディートンは、「プアホワイト」の死亡率が高くなる主な原因はドラッグ、アルコール、自殺だとして、これを「絶望死deaths of despair」と名づけた。

2人によれば、25~29歳の白人の死亡率は2000年以降、年率約2%のペースで上昇しているが、他の先進国では、この年代の死亡率はほぼ同じペースで低下している。50~54歳ではこの傾向がさらに顕著で、米国における「絶望死」は年5%の割合で増加している。

誰が「絶望死」しているのかもデータから明らかだ。アメリカでは、高卒以下のひとびとの死亡率は、あらゆる年代で全国平均の少なくとも2倍以上のペースで上昇している。こうしたデータは、トランプに投票したり、EU離脱に賛成票を投じた白人有権者とぴったりと重なる。

〔PHOTO〕iStock
 

なぜこんなことになるのか。それは「絶望」が相対的なものだからだろう。

黒人は奴隷制の時代からアメリカ社会でずっと差別されてきたし、移民は最底辺からスタートするのが当たり前だった。生活はきびしいものの、そこには「努力すればいまよりよくなる」という救いがある(これ以上、下に落ちようがないともいえる)。

ところが自動車工場などの製造業で働いていた白人のブルーワーカーたちは、ついこのあいだまで誇りをもって「メイド・イン・アメリカ」の製品をつくり、家族を養い、隣人たちとバーベキューパーティをし、日曜には教会に通って地域社会に貢献してきた。だが彼らには計り知れない理由で、それらはすべて奪い取れてしまった。残されたのは閉鎖された工場、荒れ果てた商店街、失業者の群れだ。

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