2020.02.07
# アメリカ

「中流からの脱落」に怯える“おっさん”とポピュリズムの深い関係

彼らの深い深い絶望

もちろん経済学者は、国際経済学や労働経済学の理論を駆使してこの現象を説明できるだろう。だが“被害”を受けた彼らはそれを理解できないし、受け入れようとも思わないにちがいない。こうして、「なにかの陰謀がはたらいている」との信念がつくられていく。

彼らの人生を「破壊」したのは、不公正な競争を仕掛ける外国(いまは中国、かつては日本)であり、国境を越えて侵入してくる不法移民の群れであり、移民や貧困層の人権を過剰に保護するリベラル(民主党)だ。

トランプを熱狂的に支持するのは、低学歴にもかかわらずマジョリティ(白人)に属していることで、それなりの社会的・経済的成功を手にしたひとたちだ。知識社会が高度化するなかで、いまや彼らの地位は大きく揺らいでいる。だからこそマイノリティ(黒人や移民)の脅威をリアルに感じ、排外主義へと向かうのだろう。

 

白人リベラルが嫌われるワケ

その一方でアメリカには、同じ白人でありながらとてつもなくゆたかなひとびとがいる。彼らは東部(ニューヨーク、ボストン)や西海岸(ロサンゼルス、サンフランシスコ)などの「クリエイティブ都市」に住み、金融、教育、メディア、IT関係など高収入の仕事につき、黒人やヒスパニックなどのマイノリティを支援する民主党の政策を支持し、苦境にある白人のブルーワーカーを「ホワイトトラッシュ(白いゴミ)」と呼んでバカにしている。

白人はアメリカ社会のマジョリティ(主流派)なのだから、奴隷制の「負の遺産」や移民への「差別」に苦しむマイノリティとはちがって、貧乏は「自己責任」なのだ。

ゆたかで知的な白人リベラルは、「自分たちは黒人を差別したりしない」と思っている。しかし、アメリカ社会には厳然と人種差別がある。

そうなると、「誰が黒人を差別しているのか?」が問題になる。自分たち(リベラル)でないとすれば、残されたのは頑迷で愚かな白人保守派しかいない。

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