2020.02.07
# アメリカ

「中流からの脱落」に怯える“おっさん”とポピュリズムの深い関係

彼らの深い深い絶望

リベラルな白人は、自分たちの罪(差別意識)を隠蔽するためにきれいごとを振りかざし、価値観がちがう「白人」を攻撃している――。これが、トランプ支持の白人保守派が民主党支持の白人リベラルをはげしく憎悪する理由だろう。

こうしてアメリカでは、中流から脱落した白人たちが「自分たちは人種主義(レイシズム)の犠牲者だ」と主張するようになった。白人ブルーワーカーの自己像は、東部や西海岸の白人エリートから無視され、黒人や移民たちから「抜け駆け」される “被害者”なのだ。――ヨーロッパでも排外主義の政党に票を投じる白人の自己意識は“被害者”で、押し寄せる移民によって自分たちの仕事や権利が奪われると怯えている。

欧米先進国を席巻するポピュリズムとは、高度化する知識社会に適応できた「エリート」に対する、「知識社会から脱落したマジョリティ」の抵抗運動なのだ。

 

リバタリアンとプアホワイトの共闘

日本ではまだあまり知られてないが、アメリカにはリベラリズムや保守主義と並んで、「リバタリアニズム」というきわめて影響力の大きな政治思想がある。アダム・スミス流の自由市場を擁護し、「ひとびとが自由になればなるほど世界はよくなる」と考える彼ら/彼女たちはリバタリアン(自由原理主義者)と呼ばれる。

リバタリアンの主張がどんなものか知りたいのなら、ウォルター・ブロックの『不道徳な経済学』(ハヤカワNF文庫)を読んでみるといい。そこでは売春やドラッグはもちろん、匿名で誹謗中傷する者までが「自由」の名の下に擁護される。――20世紀を代表する知識人の一人フリードリッヒ・ハイエクがこの本に推薦文を寄せているように、これはアメリカでは奇矯な思想というわけではない。

アメリカのリバタリアニズムは西部開拓時代の自助・自立の思想から生まれたが、インターネットの登場によってその活動の場はサイバースペースへと拡張された。テクノロジーによって究極の自由を実現しようとするのが「サイバーリバタリアン」で、その多くはシリコンバレーの起業家・投資家やエンジニアだ。

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