東京五輪ユニフォーム発表、やっぱりモヤモヤするいくつかの理由

本気度が見えてこないJOCの選考
安城 寿子 プロフィール

選考の公正性をめぐる疑問 

誰がどんなデザインを手がけるのかとあれこれ予想を立てていたわけですが、筆者の予想と大きく違っていたことの一つに、JOCが公正さをアピールするような選考を行わなかったということがあります。佐野研二郎デザインの公式エンブレムをめぐる炎上騒動があっただけに、五輪関係者の多くはバッシングに過敏になっているはずで、公式服については、内実がどうであれ、外観上ケチの付けようがない選考に徹するだろうと思われました。

 

今回公募で選ばれたAOKIはJOCのスポンサー(オフィシャルサポーター)です(注2)。スポンサーには自社製品を提供する優先権が与えられています。スポンサーが公募に参加した時、果たして公正な選考が行われうるかという疑問は多くの人が抱くものでしょう。

JOCが報道関係者に説明したところによると、「各社が提出したデザイン案はどの会社がどれをデザインしたか伏せた状態で選考を行った。結果的に、スポンサーでもあるAOKIのデザインが選ばれたに過ぎない」とのことですが、本当にそうだったとしても、どうしてこう、すぐにケチの付きそうなことをやってしまうのかという思いは消えません。

2008年の北京大会や2018年の平昌冬季大会では、開会式用ユニフォームについては、最初から公募を行わず、デザインも生産もスポンサー(ミズノとアシックス)に一任する形が取られたと記憶しています。今回もこの方法にした方が変に勘繰られることがなくて良かったかもしれません。

ロンドン五輪の公式服〔PHOTO〕Gettyimages

さらに、10名の「選定委員」の大半がJOCとJPC(日本パラリンピック委員会)の関係者で占められ、ファッションやデザインと関係がありそうな人は2019年6月まで日本アパレル・ファッション産業協会専務理事を務めた戸張隆夫(67)だけだったことも気にかかります(注3)。公式服を着用する選手たちの視点が重要であることは確かですが、服飾デザインの専門家を複数名入れ、忌憚のない意見を交わせる環境を整えるなど、もう少しJOCの本気度をうかがわせる人選ができなかったものかと思います。

関連記事