東京五輪ユニフォーム発表、やっぱりモヤモヤするいくつかの理由

本気度が見えてこないJOCの選考
安城 寿子 プロフィール

いきおい暴露趣味的な匂いを醸し出すことを承知でこの話をしたのは、筆者自身も含め、「公式服のデザインをどうして著名なファッションデザイナーに依頼しないのか」という疑問を持つ人の多くに「依頼が来た時、著名なファッションデザイナーは果たしてそれを引き受けるのか」という視点が欠けているように思えたからです。

今や五輪の仕事に携わることがどれほどの栄誉であるかは疑わしく、一方で、東京五輪の「おもてなし制服」(ボランティア制服)を手がけた藤江珠希が苛烈なバッシングに晒されたことなどを思うと、ファッションデザイナーにとって、依頼を引き受けることはハイリスクローリターンな選択でしかないのかもしれません。

念のため付け加えておくと、「デザイナーの個人名は公表しない」という条件に従い、JOCも、AOKIも、現在のところ、今回の公式服をデザインしたのが誰であるのか、また、それが社内の人間なのか外部のデザイナーに委託したのかといったことの一切を明らかにしていないようです。

 

活かされなかった公募条件の緩和

さて、もう一つ筆者の予想と大きく違っていたのは、ロンドン大会(2012年)とリオデジャネイロ大会(2016年)に引き続き、ジャケットとボトムに赤白二色のいずれかを配する「型」が踏襲されたことでした。

JOCは、今回の公式服の公募にあたって、ブレザーとスラックスは作製必須という条件を撤廃し、「アイテム構成は自由提案」という条件のもとにデザインを募集しました。つまり、衣服の形式については何の縛りもなかったということです。さらに、「公募要領」で「ニッポンを纏う」というコンセプトが掲げられていたこともあって、筆者は、「纏う」と言うからには、身体をふわっと包む羽織のような意匠がどこかに取り入れられるかもしれないと期待していました。羽織でなくとも、従来のテイラードタイプのジャケットとは違った何かが登場するのではないかと思ったものです。

ちなみに、1990年代以降、諸外国の公式服はカジュアル化と多様化の傾向を強め、パーカーやカシュクールも登場するようになってきていますから、ことさらテイラードジャケットにこだわらなければならない理由はありません。

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