親が一緒で安心できたから合格できた

私だけじゃない。みんなやっている。過保護にすると若い子がダメになるっていうけど、本当にそうなのか。親の愛情が伝わるほうが、子どもはやる気になるのではないか――女性はそう反論した。

 

「息子さん、もう18歳でしょう?入試に同行するのを嫌がらなかったですか?」と尋ねると、ブンブンとく首を横に振った。
「いいえ。ママは過保護だからなあって少しは嫌そうだったけど、来るなとは言いませんでした。一緒のほうが本人も安心できたんじゃないかな。だから合格できたんだと思います。そうじゃなかったら、どうなったか。あの子、結構気が弱いので」

子どもが可愛い。できるだけのことをしたい。その気持ちは素晴らしい。でも、「自分がいなければ何もできない人にしたい」とは、思っていないはずだ Photo by iStock

親の心配は、子どもには「ダメな自分への不安」に映る。自分を一番知っている親を「こんなに不安にさせている」ととらえ、自己肯定感がダウンしてしまう。合格という果実は手に入れたものの、自分の力で壁を乗り越える機会は奪われていた。

ちなみに、中学校、高校とも「受験はひとりで行かせてください。親御さんは事前の下調べ等は結構ですが、なるべく同行しないように」と言われていた。だが、女性は「先生たちは親じゃないからそんなことが言えるんですよ。落ちたらどうしてくれるのよ、ってことでしょう?」と眉をひそめた。

高校、大学とも希望通りの学校に行けた、いや「行かせることができた」親としての成功体験は、彼女にとって大きかった。

ただし、長男の大学進学と同時に自身のパートの日数を週3から週5に増やすことが決まっていたため「大学生になったら、自分のことは自分でやってもらう。今までかなり甘やかしたから」と少しばかり反省していた。