2020.02.24
# Google # シリコンヴァレー # Facebook

シリコンバレーが世界トップのベンチャー企業を生み続ける「秘密」

なぜ、自動運転車が生まれたのか?
松崎 隆司 プロフィール

IT企業が自動運転車を手掛ける必然

こうした流れの中でも、またスタンフォード大が大きな役割を演じる。

同大大学院の学生だったジョン・チャウニングが電子音楽のソフトを開発。スタンフォード大のスタンフォード大学技術ライセンス事務所(OTL)が支援先探しをした。米国国内のオルガンメーカーなどにアプローチをかけたが、関心を示さない。そこでスタンフォード大のMBAにアイデアを求め、世界最大の音楽メーカーで日本にあるヤマハを選び出した。

OTLは浜松にあるヤマハの本社に「電子音楽の技術に関心はないか」というレターを送り、ヤマハUSAのエンジニアがジョン・チャウニングに接触し、契約した。ロイヤリティーはスタンフォード大に支払われたという。

日本の通産省(現経済産業省)は「半導体は産業のコメ」と1960年代から70年代にかけて半導体産業を支援し、電子技術の開発に着手していたヤマハは日本の半導体メーカーにアプローチをかけたが、ロットが小さすぎると相手にされなかった。そこで独自の半導体生産ラインを検討していた時期だった。

その結果、1983年には世界初のフルデジタルシンセサイザーDX7を発表。10年間で1万台売れれば大ヒットという楽器の世界で、DX7は3年間で20万台を販売した。

エルトン・ジョンやホイットニー・ヒューストン、マイケル・ジャクソンなど世界中から声がかかったという。

 

当時、ヤマハをはじめ、カワイ、ローランドがシンセサイザーの開発を進めている。ただ同一のインターフェイスがなかったことからローランドの技術を基に開発されたのが、MIDI(musical instrument digital interface)だ。これでピアノだけでなく、バイオリンの音を出すこともでき、オーケストラができる。これに米国のメーカーなども参加し国際的にも普及。1984年1月にはアップルコンピュータのマッキントッシュが音楽ソフトで大ブレーク。偶然がつながって電子音楽という分野が生まれた。

スタンフォード大も、アップルコンピュータのスティーブ・ジョブズなどとも連携を取った。ただ技術が生まれてDX7が出るまで、15年という歳月が過ぎている。スタンフォード研究所(SRI)はアルタネットにつなげ、非常にスタンダードになっている。

1972年にシェーキーというロボットが開発された。

「このロボットはある部屋からある部屋にいくまでに障害物をさけながら進む機能をもっていました。しかしロボット開発はこのときいったんは終わってしまいます。ところが1972年の50年前の技術が今のナビゲーションシステムに応用されているのです」(山崎氏)
   
1972年は、まだ地図情報は国家機密。サテライトもなかった。

「しかし今はすべて見ることができる。だからそうしたソフトが使えるのです」(山崎氏)

スタンフォード研究所で技術が生まれてから実用化されるまでに、10年以上かかるわけだ。 

自動運転車の技術についても同じことが言える。今のグーグル、トヨタ自動車、ウーバーモーターズがやっている自動運転の技術も、また同じようにして生まれてきている。

「60代から70代にアポロプロジェクトが進められたわけですが、人間が月に行くのだったらトラックだって行くべきだ(remote control track on the moon)といわれるようになったのです。それでファンドがついて、開発が始まったのです」(山崎氏)

しかし、その後ファンドが出資を取りやめたことから開発はお蔵入りになってしまった。

photo by Getty Images

ところがグーグルが目を付け、無人自動車用に再び開発を始めたというわけだ。

新しい製品やサービスを開発するときに、『NEEDS(必要性)かSEEDS(改革の種となる新技術)か』という議論が昔からある。

「しかしSEEDSは50年前からあるのですよ。眠っている種はいくらでもある。コンピュータの歴史を見るとやはり大事なのはNEEDSなんじゃないでしょうか」(山崎氏)

今回現地に行くと、実際にスタンフォード大のAIラボの中に白い線を引いてその上を走っていたし、公道でも時速10マイルぐらいで走ることができた。

SPONSORED