新型コロナウイルスの影響
選挙後の台湾は中国武漢から拡大した新型コロナウイルス対策に追われている。2月12日時点で台湾での感染確認は18人に止まり、それらすべてが中国からの帰国者または海外旅行者である。蔡政権は懸命の危機管理で感染拡大を押さえ込んでいる。
いくつかの必然が台湾に味方した。2016年以降、中国は蔡政権への「制裁」として台湾を訪問する中国人旅行者の数を半減させていた。昨年秋からは個人旅行者の台湾渡航も原則停止になった。
しかも1月には総統選挙があったので、中国からの旅行者はさらに減っていた。中国人旅行者の減少は台湾の観光産業の一部にはマイナスになっていたが、防疫上はプラスになった。

蔡政権は中国に遠慮せず果断な措置を取ることができた。武漢に限らずすべての中国滞在者を入国禁止にした。中国を念頭にマスクの輸出および持ち出し禁止措置をとった。これは国民党から非人道的だとして批判されたが、ほどなくして台湾でもマスク不足が深刻になった。
台湾社会はSARSの苦い経験があり、過剰な反応も含め社会全体で感染拡大を押さえ込むという強い意思を示している。中国が「一つの中国」を盾に台湾をWHOから排除していることは改めて人々の憤りを招いている。
台湾から見て、コロナウイルスの拡大は習近平体制の諸問題を端的に示すものであり、当面、台湾で中国の影響力が高まる状況ではなくなった。
今後感染が拡大したり、長引いて台湾経済の打撃が大きくなったりすれば政権への不満も高まるであろう。しかし、感染症との戦いが一段落すれば、多くの人は「民進党政権でよかった」と考えるであろう。