新型コロナウイルス肺炎で、国内でも13日、ついに死者が出た。その後も都内や名古屋市で感染例が相次いでいるが、いずれも感染経路が不明な状態だ。16日に政府が行った第一回新型コロナウイルス感染症対策専門家会議では、「国内発生早期」の段階ではあるが、「国内感染の状況が進行する可能性」が示されている。

そんななか、政府の対応に関して懐疑的な人も多く、「初期対応がまずかったのでは」という声も上がっている。日本の対応は実際にまずいのか、海外の事例に詳しい専門家2人に話を聞いた。

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武漢からの帰国者への対応はどうだったのか

パリ在住でフランスの医療政策に詳しい、日本医師会総合政策研究機構 フランス駐在研究員の奥田七峰子氏は、「日本政府が迅速にチャーター便を出して自国民を出国させ、フランス同様病院近くのリゾートホテルに隔離したのは評価できるのではないでしょうか」と言う。

ヨーロッパではじめてコロナウイルス感染が確認されたフランスでは、報道の混乱が一部で見られたものの、医療機関のプレス対応も混乱することなくきわめて落ち着いていたという。奥田氏はさらに続ける。

「1月25日、パリで2名、ボルドーで1名、新型コロナ・ウィルス陽性の患者が入院しました。いずれもSAMU( 日本における三次救急に特化した救急システム)とSOSメデゥサン(民間の往診ドクターサービス)の迅速な連携で救急外来も通らず感染症病室(陰圧室)に即入院しました。3人とも症状が軽く、検疫・隔離のための入院でした。

フランス政府は、<武漢に行った、または行った人と接触して風邪症状のある方は、病院には来ないで下さい、かかりつけ医に行かないで下さい、SAMUに電話して指示に従って下さい>とアナウンスしました」

フランスと日本の初期対応はよく似ているが、チャーター便で帰国後の対応は一部異なっている。