あきれてものが言えない
新型肺炎の感染拡大について、先週はクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」からの乗客下船を「厚生労働省の大失態」と書いた。失態は、他にもある。肝心の「感染したかどうかの検査」を十分にできない体制を作った点だ。
クルーズ船に乗船していて、陰性と判断された乗客は2月19日から続々と下船し、隔離されることもなく、公共交通機関などを利用して自宅に戻った。厚労省は帰宅後も異常があれば、連絡するよう求めていたが、それで不十分なのは、当初からあきらかだった。

船内は感染した区域とそうでない区域がしっかり区分けされていなかった。そんな状況を踏まえれば、1回の検査で陰性だったからといって、下船までに感染する可能性は十分にあった。実際、栃木県の女性をはじめ、下船後に次々と感染者が出ている。
加藤勝信厚労相は2月26日、国会で、下船後に連絡がとれた乗客813人のうち、45人から発熱などの症状が出た、と認めた。そのすべてが感染者とは言えないが、疑いがあるのは明らかである。恐れていた事態が起きてしまった。
厚労省は自ら、感染を拡大させたも同然である。チャーター機で自国民を帰国させた各国は、帰国後も隔離している。厚労省はクルーズ船で活動していた職員を検査もせずに仕事に復帰させただけでなく、職員自身を何人も感染させてしまった。あきれて、ものが言えない。
一連の甘い対応は、日本そのものに対する信頼を失わせた。各国は、日本を冷ややかに見ている。これは、東京五輪・パラリンピックの開催問題にも響くに違いない。