ワクチン集団接種と休校
その後、1960年代半ばからはインフルエンザワクチンが大量生産されて広く使われるようになった。
学校で呼吸器疾患が広がることで社会全体に流行が拡大するというイメージは、その後の対策にも影響し続け、1970年代後半からは予防接種法に基づいて学童への集団予防接種が行われ始めた。
ただし、ほとんどの場合、健康な子どものインフルエンザは、生命に関わったり、重度の障害を残したりする病気ではないし、一生に一回しか罹らない(=ワクチンも一回ないし数回でよい)病気ではない。
その意味では、天然痘やはしかや破傷風や狂犬病などに比べれば優先度は高くはない。
そのワクチン集団接種にメリットとして期待されていたのが「学童防波堤論」ともいわれる社会防衛の考え方だ。
つまり、子どもでの流行を防げば家庭内感染を防ぐことになり、会社で働いているお父さんたち(今なら女性もだが)のインフルエンザでの休業を減らすことができて、生産性低下を防止して、経済成長を減速させないで済むという発想だ。
インフルエンザワクチンそのものは症状軽減や重症化予防の効果はあるものの、感染予防効果には無効との疑問が持たれたこと、さらにはワクチン接種による有害作用での訴訟なども問題化し、1980年代には強制的な集団接種への保護者からの批判が強まった。
その経緯で、学童に対するインフルエンザワクチンの集団予防接種は1994年に廃止となって保護者の希望による任意接種となっている。
ただし、今から見直してみると、集団免疫を上げることでインフルエンザワクチン集団予防接種は予防にも間接的には少し役立っていたとの説もある。