みずほ銀行を苦しめた「悪夢の記録」が異例のベストセラーになったワケ

読むだけで気が滅入るシステム統合の全貌

混乱から立ち直り、ようやく計画的な復旧に手が着いたのは19〜21日(春分の日)の3連休である。システムを全面的にストップして懸命の作業を続けたことによって、ピーク時には220万件以上あった振込みの積残しは、連休明けの22日に16万件、23日に1000件と減少し、24日に完全に解消した。こうして同行は、給与振込みが集中する25日のリスクを辛くも乗り切ることができたのだった。

探っていけば縦割り組織の弊害(連絡・連携ミス、情報の不共有)や判断ミスも指摘できるが、やはり最大の原因はバッチ処理とオンラインの切替えだ。帰還する第1次攻撃隊を先に収容するか、それとも第2次攻撃隊を発艦させるか……手順の混乱が招いた、ミッドウェーにおける大日本帝国海軍の壊滅的敗北を見る思いがする。

三度目の正直

この苦い教訓を受けて、2011年6月から開発作業が始まった新勘定系システム「MINORI」は、2004年から始まったシステム刷新計画(ここでは「前期」とする)の仕切り直しである。計画では2011年3月末までに完成しているはずだったが、進捗が遅れ、周辺システムを手がけているまさにそのとき、東日本大震災のシステム障害が発生した。

MINORIはみずほ銀行だけでなく、「BEST」と呼ばれたみずほ信託銀行の基幹システムも統合している。2017年7月に完成していたが、STEPS、TOP、BESTの3システムからデータを移行する必要があった。ある意味で恥ともいえる「完成遅延」の発表を2度も行い、テストと本番リハーサル、事務員、行員のトレーニングに2年の時間を要した。3度目の失敗は許されない、というなみなみならぬ決意が読み取れる。

 

旧システムが利用していたメインフレームは19台だったが、MINORIは4台だ。基幹業務はCOBOLで構築され、定期性預金、与信取引、外国為替取引といったアプリケーションとプロトコル変換にはJavaとLinux/UNIXサーバーが使われている。また、アプリケーション共通基盤と全店共通の取引元帳がシステムの負荷を分散・軽減する(次ページの図)。さらに昨年3月には、アマゾンが提供するクラウド基盤「AWS」の採用にも踏み切った。

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