新型コロナウイルスによる肺炎の影響で、サプライチェーンが分断されてしまった中国。2月末時点で、自動車メーカー全体の50%の従業員が職場に戻れていない。稼働を再開したところもあるが、部品の供給体制が万全ではなく、平時の操業体制ではないため、稼働率も30%程度だという。
中国の生産現場でいま、何が起こっているのか。中国の広東省で、ロボットなどの生産設備を生産している日系の中小企業2社のトップに、現状や今後の見通しを聞いた。
1社でも不備があると「連帯責任」
「中国のサプライチェーンが正常化するまでには、まだかなり時間がかかる。特に武漢を中心とする湖北省地区は、業種を問わず本格的な生産再稼働までには最低でも半年はかかるだろう」
こう語るのは、広東省東莞(とうかん)市で、スマートフォンやパソコン向け部品の製造装置を生産するJ-LASAの首藤優時社長だ。

J-LASAでは2月9日に、地元当局の審査を受けて合格、10日から工場での生産再開が認められた。再開の条件としてチェックされたのが、マスクと体温計の準備、隔離室の設置、連絡体制の整備だった。
首藤氏は言う。「同じ東莞市内でも区域によって対応が違っていた。工業区域ごとに当局の監査を受け、その区域内で1社でも不備があると、その区域にある全社の稼働が認められないケースもあった」
生産再開が認められても、多くの企業で、従業員が春節休暇での帰省先から戻れない状態が続いている。東莞市にある大手のスマートフォンメーカーやフォックスコンの工場は、2月末時点では止まったままの状態だという。J-LASAでは社員60人の約2割が湖北省出身であるために戻れず、在宅勤務状況になっている。