ウール
毛を刈るだけでしょ? ってよく言われるウール。しかし、毛刈りはやさしくは行われない。多くの人が観光牧場での毛刈りの様子をイメージしているのだろうが、それは別世界の話だ。
オーストラリアの農場でも、英国の農場でも、スコットランド農場でも、毛刈り作業員は、羊を殴りつけ、踏みつけ、蹴り飛ばし、切りつけ、振り回している。毛刈りを乱暴に行うため、羊たちは毛だけでなく皮膚や睾丸なども一緒に切り取られる。
毛刈りが終わった後は傷だらけであったり、立てなくなって毛刈り小屋から這って外に逃げ出そうとする羊たちの姿がある。ありとあらゆる虐待が行われていることが、100以上の農場の調査で明らかになっている。
特にオーストラリアのウールは、皮膚の面積を大きくするために品種改変で皮膚がひだ状になっているため、お尻付近のひだの間に糞がたまり、うじが湧く。それを防止するために幼齢のときにお尻の皮膚と肉を切り取る。これをミュールジングという。ついでにしっぽも切り取ってしまう。
ミュールジングを行わないことを証明する認証マークがあるが、前述の通り、ウールの毛刈り自体が残酷であるため認証は意味を成さない。大量生産の中で、福祉的な扱いを期待すること自体が無理な話なのだ。
カシミヤ
高品質だと考えられているカシミヤの90%が中国とモンゴルで生産されている。カシミヤに使われるのはヤギの冬毛だ。
毛を刈ると粗い毛まで一緒に採取してしまうため、くしで毛をすいて採取する。「くしで毛をすく」と言われれば、残酷なことはなにもないようなイメージだが、実態は違う。
作業員はヤギを引き倒し、地面に叩きつけ、手足と角を縛って身動きを封じ、大きな鉄のクシで乱暴に毛を引き抜いていくのだ。
ヤギの悲鳴を聞いたことはあるだろうか。毛を引き抜かれるとき、人間の男性の叫び声のように、ぎゃーっと叫ぶ。とても聞くに耐えるものではない。
乱暴であるため、ウールと同じく、足が不自然に曲げられ立てなくなり、膝をついて這うヤギの姿も目撃されている。