高校野球といば、体罰や暴力がつきもの…そんな印象を持っている人は少なくないだろう。そんななかにあって、強豪校・仙台育英の元監督である佐々木順一朗氏は「放任主義」を貫いてきた。『野球と暴力 殴らないで強豪校になるために』(イースト・プレス)を上梓したスポーツライターの元永知宏氏が佐々木監督に、そのスタイルにこだわる理由を聞いた。

「暴力一切なし」佐々木順一朗による野球
仙台育英(宮城)を率いて甲子園に19回(春6回、夏13回)出場し、通算29 勝を挙げ、2019年秋に還暦を迎えた佐々木順一朗は、ずっと暴力なしで指導を行ってきた。それは、選手のときに理不尽なしごきを経験したからだ。
東北高校(宮城)時代にエースとして2度甲子園に出場したが、早稲田大学に進む前に肩を痛めた。「満足にキャッチボールもできなかったくらいで、大学4年間はドブネズミみたいなもんでした」と佐々木は大学時代を振り返る。
「僕はいるんだか、いないんだか、みたいな選手でした。でもそのおかげで、日の当たらないところにいる選手の気持ちがよくわかるようになった。高校生を指導しても、 『なんでできないんだ?』とは思いませんから」
大学卒業後に電電東北(現NTT)に入社、1993年に仙台育英のコーチになったあと、1995年秋に監督に就任した。
「僕は高校でも大学でも、殴られた経験があったので、そういうのは全部やめて、楽しく野球をしたいと思いました。教え子たちに聞いてもらえばわかるけど、そういうのは一切なし。初めからずっと。自分がやられて嫌だったことは全部やめました」