360度みんな顧客
筆者は嘗(かつ)てファンド・マネージャーとして外国人を顧客にしていた。そして外資系金融機関に転職後は顧客に加えて上司・同僚・部下が外国人という環境に置かれた。
その際に筆者が行ったのが顧客志向の拡張版、“全方位顧客志向”というものだ。顧客だけが顧客ではなく、上司も同僚も部下も360度が顧客であると考えて行動したのだ。
外資系は足の引っ張り合い裏切り下克上が当たり前の弱肉強食の世界。そんな世界では全てが敵といえるのだが周囲全部を“顧客”であると考えるとポジティブな対人戦略・戦術を立てられスムーズに外国人たちと対応することが出来た。
甘えや依頼心はなくなり要らぬストレスは減る。ビジネス環境で生じる全ての結果をその後の自分の改善に有機的に繋げることが出来た。
光秀はこの顧客志向を己の論理と心理の基盤にしながら上司である信長、そして同僚である秀吉たちに対した。顧客志向が光秀の思考のOSとなり、その上に様々なアプリケーション(報告・連絡・相談の重視など)をインストールしながら行動していくことで異例の早さの出世を遂げていく。
当時の堺には南蛮人という絶対的他者がいた。顔の作りも言葉も違い、ものの考え方も全く違う。キリスト教宣教師の存在は有名だが筆者はそこにユダヤ人もいた筈と考えた。
そこで本書には、ベネチアでキリスト教に改宗して貿易船に乗り込み、日本に来てから悔い改めてユダヤ教徒に戻って生きることを選んだ人物、イツハク・アブラバネル、日本名・油屋伊次郎というパラメーターを創り出した。
ユダヤ人の存在が宣教師たちの記述に一切ないのはキリスト教徒からは忌み嫌われ徹底して無視されたからだと考えることが出来る。