「与えられた問題」ならAIが得意
今回は、前回の最後の問いかけ、「AIは問題解決と問題発見のどちらが得意か? それはなぜか?」について解説します。
もちろん本連載の趣旨から、当然「AIは問題解決が得意で、問題発見は不得意である」ことはなかば自明のことと言えるでしょう。ここでは改めてその理由を問題解決と問題発見が根本的に持っているその性質から考えてみましょう。
現在のAI技術が最も得意とするのは、「明確に定義された問題に対する最も適当な答えを膨大なデータ(ビッグデータ)から推論する」ことです。最もわかりやすい事例が、AIの進化として象徴的に語られている囲碁ソフトのアルファGoやさらにそれが進化したアルファGoゼロです。
一世代前のAIでは「問題と答えを全て人間の専門家の知識から覚えさせる」ことで問題解決を図っていました。したがって、そこでは「教えていないことはできない」という、ある意味当たり前の能力の限界がありました。たとえ専門家とはいえ、人間の最高レベルを超えることはできなかったわけです。
ところがディープラーニング技術をベースとした現在のAIに必要なインプットは「問題と答え」ではなく「問題とビッグデータ(による学習)」になります。
その膨大なデータからパターン認識をして最善の答えを導き出すために、「人間が教えていない答え」をも導き出すことが可能になり、膨大なデータが入手可能で、そこからある程度のパターンが導き出せる世界においては無類の強さを発揮することになります。

今後IoTや5G技術の進展に伴って、蓄積されるデータがこれまで以上に飛躍的に増大していく今後のデジタル環境を考えると、このような世界はさらに広がっていくことは間違いありません。さらに問題解決におけるAIの出番が広がるというわけです。