「マスクをしない米国」のリスク
一方で、トランプが「wash」という言葉を使ったのは意味深い。当たり前であるが、ウォッシュは「洗う」という意味があるからだ。

私は、今回の感染拡大が各国で異なる様相を呈していることに関して、とくに、EUや米国で感染が急激に拡大していく中、先行して感染が広がったはずの日本で感染者数や人口当たりの死者数が少なく済んでいることについて、「手洗いの習慣」といった日本では当然とされていることの影響が大きいと考えている。
効果の程度については見解が分かれるとは思うが、日本では多くの人が早くからマスクをして、込み合った場所で自分の飛沫が他人に届くのを防いでいた点も重要なポイントだろう。
3月16日に配信された「アメリカの空港、帰国の検疫で大混乱」という記事に掲載された動画を確認したところ、米国テキサス州・ダラス空港に到着した帰国者たちは、大混雑の中、ほとんど誰もマスクをしていなかった。トランプ大統領がヨーロッパ全土からの30日間の入国停止措置を発表した直後にもかかわらず、だ。日本の満員電車並みの距離感で、誰かが感染していた場合には容易に広がることが想像できる。
実は私は、同じ日に米国での調査を終えてダラスから帰国する予定でいた。
調査が中止になって渡米できず残念に思っていたのだが、マスクをしていない多くの人で混乱するダラス空港の映像を見て、自分がその場にいたら……と考え込んでしまった。