「アビガン」は本当に効くのか?
手洗いやマスクは感染拡大の予防にはなるが、最終的に新型コロナウイルス問題の終息へと繋げるには、やはり薬剤やワクチンの開発がカギを握るのではないだろうか。

3月17日には「中国政府 臨床試験でアビガンに治療効果 治療薬として使用へ」というニュースが出た。中国政府の発表によれば、臨床研究の結果、日本の製薬会社・富士フイルム富山化学が開発したインフルエンザ治療薬「アビガン」(一般名「ファビピラビル」)に新型コロナウイルスの治療効果が認められた、という。
ただし、喜ぶのはまだ早い。薬剤を日本人である私たちが入手できるようになるには、治験(臨床研究)を経て当局の承認を得なければならない。薬剤には治療効果と同様に副作用があるからである。
「アビガン」は胎児に対する催奇形性、つまり、妊娠中の女性が薬物を服用したときに胎児に奇形が起こる危険性があるという指摘を受け、日本では通常の抗インフルエンザ薬としては使用されていない。
新型インフルエンザが流行し、他の薬が効かないと国が判断した場合に、厚生労働大臣の要請を受けて製造を開始するという特殊な承認となっている。日本政府は200万人分を備蓄し、富士フイルムに増産を要請しているという報道もあるが、すぐに使用できる環境ではないのだ。
しかし早期に使える可能性はある。
日本ではPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が薬の承認審査のプロセスを行うが、近年では非常に重要な薬剤は、ファストトラックという制度(優先審査制度:厳密には希少疾患用の制度)とか、生命に重大な影響がある疾患などに条件付きで早期に承認する仕組みが導入されている。これを活用すれば、案外早く薬剤として使えるようになるかもしれない。