“わからない”から人間は面白い。
“真犯人は誰なのか”――。最終回を目前にして、TBS日曜劇場『テセウスの船』が大きな盛り上がりを見せている。主人公が、父親が連続殺人事件を起こしたとされる平成元年にタイムスリップするという設定の中、その父親・佐野文吾を演じる鈴木さんは、平成元年の“正義感溢れる父親”のリアルと、事件から31年後のリアル、二つの時間軸で存在感を発揮している。
2018年に大河ドラマ『西郷どん』で主人公の西郷隆盛を演じて以来の連続ドラマ出演。昨年は舞台・映画をメインに活動していたが、舞台で演じたのは団地で暮らす小学生の役だった。落ち着いた口調で、「僕は自分の中に“ガキっぽさ”を、かなり残していると思うんです」と話す彼は、新しい役に出会うたび、何らかの“原点”に還るという。そうやって、心のタイムスリップを繰り返すのだ。
大人も子供も
問題を抱えている点では同じ
学生時代、演劇サークルに所属したことが役者を志すきっかけになった。いわば舞台は、彼の芝居の原点である。
「以前から、『一年に一本は舞台をやれたらいいな』と、なんとなく思っていました。ちょうどいいタイミングで、『蓬莱竜太さん脚本、藤原竜也さんとのダブル主演で舞台をやりませんか?』というお話をいただいて。渡りに船とばかりに飛びつきました(笑)」
しかも脚本は当て書き(※演者のイメージに合わせて役を設定し、芝居を書き下ろすこと)だった。藤原竜也さんと鈴木さんは小学生の役で、舞台は団地。竹馬の友が、些細なことがきっかけで関係が壊れ、次第に団地内での王座を争うようになる。作・演出の蓬莱さんは、演出をしながら、「この作品(※『渦が森団地の眠れない子たち』)は、昔の王国を舞台にしても成立し得る」と感じたらしい。
「嫉妬や裏切り、友情の崩壊、暴力など、子供同士の人間関係を媒介にして、人間の深淵な部分が描かれていて、演じながら気づかされることが多かったです。僕自身も、『子供は無垢で純粋なものである』とか、そういう通り一遍の見方をするのは好きじゃない。この舞台は、大人も子供もそれぞれに問題を抱えていて、最終的に『子供をなめんなよ!』というメッセージが残った気がして、そこがよかった。
そもそも子供の純粋さって、“無知”とも連動しているじゃないですか。ものを知らない分、自分以外のモノや人に対して残酷だし、経験値が低い分、思慮が足りなかったりもする。僕は、考えることが好きで、演じる時も自分の中で何かしらの答えを持っていたいと思うタイプなんですが、『渦が森団地の眠れない子たち』の時も、答えを探す旅に出ているような気分でした」