2020.04.16
# AI # ロボット

AIが手塚治虫の漫画に挑んだら…本当の「働き方改革」が見えてきた

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松田 雄馬 プロフィール

AIの生死を分けるのは「演出」

松田:いわゆるAIが生成した映像や、絵画などの作品が話題になっています。たとえば、ゴッホの絵などを事前に学習させることで、写真の風景をゴッホ風の絵にするような「画風変換」という技術などは広く使われている一方、アーティストなどの映像を自動生成することについては、賛否が分かれています。私自身は、研究者として、社会を豊かにする技術の在り方を大事にしているのですが、TEZUKA2020に挑む際に大事にしていたことは何だったのでしょうか。

手塚:重要なのは、演出の仕方であり、扱い方です。AIで生成したものや技術をそのまま見せるようなものは、たいして面白くありません。如何に感動を与えるかがエンターテイメントでは重要だと考えています。

たとえばCGは、今や、現実そっくりなものを作ることができます。しかし、ただ現実のものが見たければ、CGなど使わず、現実のものを映せばよいわけです。CGで最初に成功した例は、映画『ジュラシックパーク』の恐竜だと思うんですが、全部をCGで描くわけでもなく、全部を人形で再現するわけでもない。スピルバーグ監督がシーンごとにどのように見せれば、観る人の心を動かすことができるのかを考え、必要なポイントだけCGを使う。このように、観る人がいて、必要な演出があって、そこではじめて技術が生かされるんです。

松田:どのような演出を行い、感動を与えるかが最初にあり、それを達成する手段として技術を使う、という技術の使い方は、まさに技術が人間と共生していくうえで、中心になる考え方ですね。

その中で、今回のプロジェクトにおける技術の使い方は、「構想ノート」を作るというところにあったと聞きます。特に「構想ノート」に着目した理由は何だったのでしょうか。

(c)「TEZUKA 2020」プロジェクト
 

手塚:手塚治虫の漫画は「ストーリー漫画」と言われていて、物語がしっかりした構造を持っている骨組みのある漫画です。ですから、はっきりとした構想が不可欠となります。そこでまず、「ストーリーの生成」が必要になると考えました。その次が「キャラクターの生成」であり、そこまでが今回の取り組みでできたことです。

一方、今回はまだ到達できなかったことは、キャラクターを動かすための演出効果、すなわち「コマ割り」です。手塚治虫のコマ割りは、枠の大きさを自在に変化させ、読み手の気持ちを誘導する演出を行っています。手塚治虫の漫画を読むと、コマの大きさがすべて異なります。この演出に関しては、未だデータ化できていない部分であり、AIの行うべき次のステップと考えています。

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