2020.04.16
# AI # ロボット

AIが手塚治虫の漫画に挑んだら…本当の「働き方改革」が見えてきた

前代未聞の漫画『ぱいどん』を無料公開
松田 雄馬 プロフィール

演出を可能にする逆算思考

松田:読み手の気持ちを誘導していく演出を行うことは、作品を作る人だけでなく、技術に携わる我々にとっても重要な考え方であり、人間にしかできないものです。

手塚:そして、演出を行うには「逆算」が必要なんですよ。すなわち、最初に完成図のビジョンを持つことが必要です。

松田:逆算は、AIを考えるうえで重要なキーワードです。人間の知能は、まずゴールを決め、そのゴールを目指して思考し、身体を動かします。しかし、単純にデータを学習するだけでは、最初に決めたゴールを満たせるかどうかはわからず、人間の助けが必要になります。

今回は、まさに演出を行う皆さんによって、それが達成できたということですね。これは、技術者だけではできなかったことであり、演出家と技術者のコラボレーションがうまくいった、理想的なプロジェクトだと思います。

とはいえ、演出家と技術者との間で、見ているものが違うなど、さまざまな苦労があったのではないかと推測します。今回のプロジェクトを推進していくうえで、どのようなコミュニケーションを行ったのでしょうか。

手塚:苦労はありましたね。特に、はじめの話し合いや、プロジェクトメンバー同士のコミュニケーションについては、慎重に行いました。

たとえば、技術者は常に100%を目指します。もちろん、これは、技術に携わる人の姿勢としては当然です。しかし、クリエイティブの業界では技術は100%でなくてよいという考え方があります。なぜなら、100%を目指すときりがないからです。したがって、あえて技術100%にせず、観る人の想像力で補ってもらうことで、作品は完成するんです。

 

それを誰よりもわかっていたのが手塚治虫ではないでしょうか。たとえば、ブラックジャックは、わずか24ページの間に、驚きや感動を与える作品です。丁寧にストーリーを描いていては、とてもページが足りません。彼は、読み手にストーリーを補ってもらえるように、「省略」を巧みに行いました。そして、省略されたストーリーを読み手が補えるように「誇張」も行いました。この「省略」と「誇張」を巧みに行えるのは、最初に完成図のビジョンがあり、読み手をどのように感動させたいかという逆算思考ができているからこそです。

関連記事