手塚治虫の「新作」から考える…AIは万能か、ツールに過ぎないか

マンガ『ぱいどん』を無料公開
松田 雄馬 プロフィール

今までの手塚作品にはなかった主人公像

松田:あえて、手塚治虫先生のキャラクター作りを現代風にしたそうですが、具体的にはどのようなことを行ったのでしょうか。

手塚:手塚治虫のキャラクターには、二つのタイプがあります。一つはブラックジャックのように、天才的な能力を持つ人間が活躍するタイプです。この場合は、キャラクターは医者などの一般的な職業に就いています。もう一つは、普通の人間が特殊な状況に巻き込まれ、コツコツと解決していくタイプです。どちらのタイプにしても、自分の腕ひとつで、自分の置かれた状況を解決していくものです。

それに対し、ぱいどんは、その二つのどちらでもない、科学技術を使うという設定を行いました。具体的には、ぱいどんは、科学技術を搭載した目を使いこなします。この目は、実は最先端のデバイスであり、脳に直接信号を送ることができるという設定です。

松田:ぱいどんのキャラクター設定は、どのようにして生まれたのでしょうか。

手塚:まず、AIが作ったぱいどんのイラストを見て、片目をつぶっているという個性に着目しました。さらに、開いている目にも、内に秘めた何かを感じました。これら個性を生かすには、と考え、ぱいどんの設定に至りました。

(c)「TEZUKA 2020」プロジェクト
 

他にも、ぱいどんと共に登場する小鳥ロボットは、AIが作った別のストーリーの中で主人公として登場する設定だったり、他の登場人物の顔も、すべてAIが作ったものを生かしました。唯一、遊び心として登場する浮浪者ロボットがいるのですが、これは、ファンの方はお気づきと思いますが、実は過去の手塚治虫作品に登場するキャラクターなんです。

松田:なるほど。単に技術を見せるのではなく、あくまで新しい作品を作って読者を楽しませるということに焦点を当て、人間が着想を得る、という目的のために、うまく「AI」を活用したわけですね。

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