モノは言えないという現実
昨年まで、ブラック弁護士事務所に勤めていたという元弁護士は言う。
「ごく一部かもしれない。でも、高い倫理観を求められる弁護士の世界で、幼稚ないじめや、悪質なパワハラ、セクハラが行われている実態は、多くの人に知っていただきたい」
もっとも弁護士事務所内でのハラスメントや労働基準法違反については、弁護士会をはじめ、これを申し立てる窓口もある。

だが、先でも触れたが、専門性高い弁護士の世界は、同時に村社会だ。そうした申し立てを行うこと、それそのものが一般人には窺い知れない高いハードルとしてはだかっている。
弁護士会に申し立てたところで、所詮は身内の集まりだ。年配で存在感のある弁護士であればあるほど、弁護士会もどこか及び腰だという。労働基準監督署などの行政にしても、やはり“弁護士”相手には、なかなかモノは言えないというのが現実のようだ。
「弁護士として、ずっと生きていくなら、黙っているほうが得策ですから……」
悔しさを表情に滲ませながら、元弁護士は、こう語った。