優秀な新人が次々犠牲に…「ブラック弁護士事務所」の恐ろしき実態

なぜ辞めたいと言えないのか
秋山 謙一郎 プロフィール

優秀な人が狙われる

そもそも、この元弁護士とブラック法律事務所との関わりは、司法修習中の弁護修習時に遡る。

弁護士の就職活動は、かつてこそボス弁がこれはと思う人材に声掛け、一本釣りを軸とする職人気質の強いものだった。だが、今では、弁護士事務所側が採用希望者への説明会を開き、質疑応答を重ねるなど、一般企業と変わらないそれに変わりつつある。

しかし、優秀な人材はこの限りではない。司法修習中の早い段階からスカウトされる。元弁護士もこの例に違わず、ボス弁によるスカウト採用だった。

さて、この「優秀な人材」とは、ここでは「予備試験合格者」のことを指す。現在、弁護士、裁判官、検察官といった法曹となるための司法試験を受験するには、法科大学院を経るか、予備試験に合格するかの2ルートだ。

このうち予備試験合格者は、法曹界では、頭脳明晰を認められたエリートとして一目置かれる存在である。元弁護士も、予備試験合格者であったことから、かなり早い段階から青田買い――、採用の声がかかったそうだ。

その声掛けしてきたボス弁の弁護士事務所への就職を決めた理由は、ずばり勤務地が都内であること、小規模の事務所で和気あいあいとした雰囲気の中で働きたいという条件が合致したからだという。

採用条件は一般企業でいうところの正社員としての採用、雇用契約である。給与面では年収500万円と若干の不満があったが、弁護士というのは、サラリーマンとは違い、独立性高い職業である。

 

勤務先事務所から離れて個人で案件を請けることもできる。なので収入面では、個人で案件を受任すれば、十分、やっていける。実際、勤務先以外の弁護士事務所や、個人で案件を請けて、収入を増やしている弁護士も少なくない。

「ところが司法修習が終わって、入所してから、これは、おかしいと思いました……」

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