2020.04.01
# 中国

「食用野生動物が新型コロナ発生源」は中国政府の捏造か

秘密の事情があるのだろうか…
北村 豊 プロフィール

巨大市場、中国の食用野生動物取引

しかし、野生動物の取引を全面的に禁止する旨の法律を成立させるのは容易かもしれないが、中国における野生動物食用市場の規模は小さくないのが実情である。

陝西省西安市に所在する西北法政大学の動物保護法研究センター研究員の李堅強によれば、野生動物食用養殖業界の2018年における生産高は約1494億元(約2兆3900億円)であり、野生動物食用養殖業界の2016年における雇用者数は622万人であった。

やみくもに野生動物の取引を禁止にして、その中に食用として養殖された野生動物も含めるとなれば、野生動物食用養殖業界の雇用者数は、2016年の統計で622万人だから2020年の現在は恐らくそれ以上の数の雇用者が失業することになる。

一方、上述した野生動物取引禁止令には、スッポンやカメ、カエルといったよく見かける両生動物が含まれているが、それらの人工養殖物の扱いはどうなるのかということに世論が注目したのだった。

3月5日、農業農村部は下部組織に対して緊急通知を出し、『国家重点保護経済水生動植物資源リスト』中の品目は取引禁止の範囲には含まれないと発表した。取引禁止範囲に含まれない品目には、チュウゴクスッポン、カメ、「牛蛙(ウシガエル)」、「美国青蛙(ブタゴエカエル)」などがあり、これらの品目は販売禁止から復活して販売可能となった。

しかし、広東省の珠江三角州で養殖規模が大きい「泰国虎紋蛙(タイ・トラフガエル)」は、肉質が鶏肉と似ていることから俗称「田鶏(田んぼのニワトリ)」と呼ばれる食用カエルの一種であるが、取引禁止範囲に含まれない品目にはタイ・トラフガエルの名前はない。

タイ・トラフガエルは、食用として米国から導入されたウシガエルやブタゴエカエルに続いて、タイから導入された大型の食用ガエルで、成長が速く、養殖が容易で、病害が少ない特長がある。

 

なお、中国には中国原産の「虎紋蛙(トラフガエル)」もいるが、長年にわたり食用として乱獲されて個体数が激減し、今では絶滅危惧種に指定されている。

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