新型コロナ「危機的事態」に陥ったヨーロッパの現実

一方、ドイツの死者数が少ない理由とは
福田 直子 プロフィール

メルケル首相がテレビで非常事態を真剣に訴えたにもかかわらず、市民の外出が続いていた。

旧東独時代に経験した監視国家への経験からか、メルケル首相自身は外出制限令を全国に発令することを躊躇し、できれば市民自らの自粛で切り抜けることを願っていたため、各州大臣と対立していたことが報道されている。

政府の呼びかけが次第に厳しくなり、日常生活が激変したものの、公共放送ARD局のアンケートによれば、回答者の95%が政府の対策方針を支持している。

〔PHOTO〕gettyimages

一方、フランスのマクロン大統領は、「私たちは今、戦争にある。健康をめぐる戦争だ」とテレビを通じて呼びかけた。

フランスの感染者数はドイツより少ないものの、死者はドイツの6倍である。

ドイツと国境を接しているフランスのアルザス地方では、2月下旬、プロテスタント教会で2000人が集まったとき、感染者がいたとみられ、瞬く間に感染が広まった。

 

フランスで初めて感染が認められたのは1月下旬と早かった。2月、イタリアのロンバルディア地方を何回か訪れてアルザス地方に帰った女性がコロナ感染と判明したが、軽症であった。軽症者が外出することで感染が広がるということは今でこそ認識されているが、そのことがわかるまでにはさらに2〜3週間を要した。

感染者のクラスターが局地的に集中することで、アルザス地方の病院では人工呼吸器が足りず、近隣ドイツのフライブルクの病院がフランスのストラースブルクから患者を引き受けることになった。医師たちは70歳以上の患者に呼吸器をつけないという厳しい選択を迫られている。

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