借金帳消し、スルガ銀行は “禊”
2018年2月には、オーナー247名から委任を受けた被害弁護団が発足、2019年9月11日に、被害弁護団はスルガ銀行に早期解決を求める調停を東京地裁に申し立てた。同年11月5日、東京地裁から解決への勧告が行われ、スルガ銀行と被害弁護団を中心に解決方法の検討が進められていた。
そして2020年3月25日、スルガ銀行と被害弁護団は解決方法で合意に至った。その解決方法とは、不動産購入向けの融資と不動産を「相殺」するというもの。つまり、土地と建物の物納を条件に、借金を帳消しにするのだ。
具体的には、スルガ銀行はシェアハウスのオーナーに対する貸出債権を第三者(投資ファンドなど)に売却する。シェアハウスのオーナーは、この第三者にシェアハウスの土地と建物を物納することで借入債務を解消する。
実勢価格より高値で物件を取得したオーナーの場合、土地と建物の物納による代物弁済では土地と建物の実勢価格と返済すべき借入金に差額(不足分)が発生するが、この差額はスルガ銀が「解決金」として賠償する。
これにより、オーナーは借金の返済を免れることができる。対象は東京地裁に民事調停を申し立てていたオーナー257名で、物件数は343棟。ローン残高は約440億円となる。
スルガ銀行との合意後、被害者弁護団は、「被害者オーナーが不正融資による債務から解放されることになる」との声明を発表、都内で記者会見した河合弘之弁護団長は「金融史上初の完全救済を勝ち取った」と述べた。記者会見に同席したオーナーの1人は、「つらくて苦しい時間から解放され、ほっとしている」と安堵の表情を浮かべた。
スルガ銀行は2018年9月7日、創業家の岡野光喜会長兼CEOなど、山明広社長ら役員5名が引責辞任。同10月5日には、金融庁から不動産投資向けの新規融資を6カ月間禁じる一部業務停止命令を受け、同11月30日に金融庁に提出した業務改善計画では、「創業家本位の企業風土を抜本的に改めることが改革の前提条件」と明記し、創業家と“訣別”した。
その上で、東京地裁から「不法行為に基づく損害賠償義務が生じる」と認定され、調停勧告に応じることで、この問題に対する “禊” を済ませたということだろう。