スルガ銀行「かぼちゃの馬車」事件、借金帳消しは甘すぎやしないか

「投資は自己責任」のはずなのに
鷲尾 香一 プロフィール

救済は不自然ではないか?

だが、この解決には多くの投資会社や投資家から疑問の声が出ている。背景には、事件が持つ “2つの特殊性” がある。

問題の主軸がいつの間にかスマートデイズという不動産投資会社からスルガ銀行による“不正融資事件”にすり替わってしまった点。もうひとつが、この問題はスマートデイズが「かぼちゃの馬車」という商品を使った“詐欺事件”だったのか、それとも同社の単なる“投資の失敗”だったのかという点だ。

 

被害者弁護団の河合団長は記者会見で、「最も悪いのは悪徳不動産業者(スマートデイズ)だが、戦略的にスルガ銀行に照準を合わせて徹底的に戦ったことが勝利につながった」と述べている。

“社会の公器”たる銀行による不正融資が、社会的な問題であることは確かで、不正融資により被害を受けたオーナーが救われることは喜ばしいことではある。しかし本来、この問題で第一義的に責任を問われるべきはスマートデイズであるはずだ。

今回のスルガ銀行との解決策で対象となるのはオーナー257名だ。シェアハウスのオーナーは全体で1258名いる。被害者弁護団は「残りのオーナーに対する救済への取り組みを続ける」としており、スルガ銀行も協力する姿勢を示してはいる。

しかし、スルガ銀行から融資を受けたオーナーだけが救済されることの “不自然さ” には疑問が残る。

「もし、スルガ銀行による不正融資がなかった場合、こうした救済の形はなかっただろう。問題の元凶であるスマートデイズの経営破綻からオーナーが受ける被害に違いはない」(スルガ銀行以外から融資を受けているオーナー)や、「銀行借り入れではなく、自己資金でオーナーになったため、救済措置はまったく望めない」(別のオーナー)といった疑問も声があがっている。

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