スルガ銀行「かぼちゃの馬車」事件、借金帳消しは甘すぎやしないか

「投資は自己責任」のはずなのに
鷲尾 香一 プロフィール

「投資がわかっていない」

例えば、今回の解決策では、借入金の返済免除を行うことでスルガ銀行には損失が発生する。一方、オーナーは借入金の返済が免除されることで利益が発生する。これは「債務免除益」に該当する。

「債務免除益」とは債務免除(借入返済義務の免除)等によって債務(借入)が消滅し、債務者が利益を受けることで、債務免除益は所得として原則課税される。しかし今回、この「債務免除益」は非課税扱いとなる見通しだ。この点からも、本件の解決方法が通常の企業の経営破綻などと扱いが大きく違うことがわかる。

 

また、確かに「かぼちゃの馬車」には高利回りを謳うなど詐欺的な側面もある。しかし、スマートデイズは必ずしも詐欺を目的としていたわけではなく、最初は順調だったビジネスモデルが無理な運用計画で崩壊したわけで、オーナーたちは「詐欺話に引っかかった」というよりも、「投資に失敗した」という側面が強い。

こうした点から、「どこから資金を調達しようが、“欲に目が眩んで”スマートデイズの投資話に乗ったのは、どのオーナーも同じ。投資は自己責任が基本なのに、それを免れるのはおかしい」(不動産投資会社)、「投資で失敗する人はたくさんいる。失敗したからといって、ごねれば債務免除になるのであれば、投資という行為は成り立たなくなる」(商品投資会社)、「投資は自己責任。株式投資に失敗したからといって、損失が補填されることはない。『かぼちゃの馬車』に投資した人達は、そもそも投資というものがわかっていないのではないか」(株式投資家)といった厳しい声も多く聞かれる。

新築アパートの運用利回りが7%程度だった時、スマートデイズは「かぼちゃの馬車」について8~10%の利回りを謳っていた。サブリースという制度を詳細に勉強し、あるいは長期的なキャッシュフローを自分自身で算定し、投資の採算の検証を行っていれば、スマートデイズの「うまい話」に疑問を持ったはずだ。

そこには、投資について自らが勉強することもなく、安易に儲け話に乗った結果、大きな経済的被害を被ったオーナーたちの姿がある。

「かぼちゃの馬車」問題は、改めて投資教育の重要さを示しているのではないだろうか。

関連記事