「薬用」や「殺菌」を謳うハンドソープが多く販売されているが、我が家では長年、泡状の「手洗いせっけん バブルガード」を使ってきた。2009年の発売直後から、洗面所にもトイレにも台所にも常備してある。
2009年は新型インフルエンザ(ウイルスはH1N1)によるパンデミックが起こった年だったため、インフルエンザウイルスに効果があると聞き飛びついたのである。(医薬品ではないのでボトルには抗ウイルス効果は記されていない)。

この「バブルガード」はシャボン玉石けん(本社・福岡県北九州市若松区)の製品だ。
同社の全国的な知名度は高くはないが、地元北九州市や九州では知らない人はいない。
私は25年前から日本を代表する「ものづくり都市」、北九州市の取材がライフワークとなり、今も継続している。
当然ながら北九州市を代表するメーカーの一社である同社との縁も深いが、「バブルガード」について詳しく聞いたり調べたりしたことはなかった。
無添加石けんで「赤字が17年」
1910年創業の同社は、1960年から洗剤大手メーカーの製品と同じ合成系洗剤の製造を開始し利益をあげていた。鉄と石炭の街ゆえ労働者の体や衣服の汚れが大きく洗剤の消費量が多かったからだ。
だが安全性や環境問題への配慮から、1974年に自然原料を使う昔ながらの「石けん」だけを製造するようになった。
原料は牛脂やナタネ油、パーム油などの天然油脂と自然塩、カセイソーダ、カセイカリのみ。
原料を大きなタンクで撹拌し、いわば「熟成」して作る。日本酒の醸造のような感じだが、これは手間と時間がかかる。
一方、圧倒的なシェアを占める合成洗剤は低廉な石油化学原料で大量生産し低価格を実現しているためまったく勝てず、「赤字が17年」も続いた。

石けんはきわめて身近な製品であるため、ほとんどの人はその原料について考えたことがないと思うが、昔ながらの「石けん」と広く普及している「合成系の洗剤や石けん」との違いは、シャボン玉石けんのウェブに詳しい解説がある。
「自然原料無添加石けん」と「合成系の石けん」はまったく別の製品という印象だ。
我が家で風呂場用にシャボン玉石けんの固形石けん使うようになった直後、飼い犬にかじられてしまったことがある。それまで使っていた有名ブランドの(合成系)石けんをかじったことはなかったので驚いた。
そこで思い出したのが、幼年時代、留守中にイエネズミが石けんをかじった跡を見たことだった。犬もネズミも昔ながらの石けんは食べても安全という本能が働くのだろう。
実際、10年ほど前のことだが、シャボン玉石けんの工場で熟練工が製造途中の石けん液をちょいと舐めて熟成度(?)を試すのを見てびっくりしたことがある。