2020.04.19
# フランス

フランスで「1ヵ月ロックダウン」を経験、私の精神に現れた「変調」

続く「異常事態」に疲労困憊…
大野 舞 プロフィール

それでもこの時点では彼らともまたすぐに会えると思っていた。しかし事態は急変し、その翌々日から外出禁止などを含む厳しい規制が始まった。それからは10万人の軍人や警官が監視のために全国に配備され、人々は食料品を買う以外は基本的に外出を禁じられている。

家の周りのちょっとした散歩や運動のための外出は許可されているが、基本は一人、あるいは同じ家のメンバーのみという限定がつく。また、買い物も含めて、すべての外出は正式な書式に署名をし、常に持ち歩いていなければ罰金が課せられる。

消毒が行われているパリ市街(4月16日)〔PHOTO〕Gettyimages

それぞれの市町村が独自のルールを設けているケースもある。例えばパリ市は、午前10時から午後7時までのパリ市内でのジョギングを禁止にしてしまった。なかにはベンチに座る人がいるという理由で、町中のベンチを撤去したり、2分以上座るのを禁じた町もあるようだ。

ちょうど4月頭からイースター休暇が始まった。すると、人々がバカンスに出かけることがないように、と監視人員が大規模に街中や駅に配備されると発表された。深刻な事態なのだけれど、こんな時でもバカンスに行こうという人々が大量にいることを前提として社会が動くことに少し可笑しくなった。

 

神経質になる買い物客

私の暮らす町はパリ市から電車で20分程度のいわゆる「パリ郊外」だ。平常時も静かな町だが、ロックダウンされてからはさらに静かになった。買い物などに出かけた際には、たまに遠くに人が見えても、わざわざ歩道を変えるなどして、すれ違わないようにしているから、本当に家族以外の他人と「接近」する機会がない。

先日はスーパーでびっくりするほど神経質になっているおじいさんがいた。2m以上の間隔をとって並んでいるのに、もっと後ろに行ってくれと大きなジェスチャーをされる。ここまで神経質になる人ばかりではないが、誰もがなんとなく人とすれ違うことを気まずく感じ、なるべく早足に通りすぎ、お店を出たらすぐに消毒液で手を洗う。

関連記事