慣れてきたと思っても…
こうして実際に感染したかもしれないという出来事があったものの、人はやはりある程度、新しい環境に慣れてしまうものだ…と思っていた。ロックダウンされる前は、いつもの生活の枠組みが壊されることに不安を抱いていたけれど、すぐに家庭内での一日のプログラムを作り、ある程度みんなが居心地のいいリズムに落ち着いてからは淡々とそのプログラムを日々こなしている印象を受ける。
ところが、先日、変な夢を見た。電車に閉じ込められ、身動きできない状態にされて、最後は解放されるのだけれど、解放されるためにもまた異様に時間がかかる、という夢。すると夫も、何かに迫られるような夢をみて、朝起きたら疲れてしまっていることがあるという。
ルモンド紙が、精神科医が読者からの質問に答えるというコーナーを設けた。その中で、緊迫感のある夢をみて、朝起きても疲労感を覚えるという経験をしている人が他にもいることを知った。精神科医曰く、閉じ込められた状況での一番の敵は「先が見えない」不安なのだという。仕事やプライベートでも予定されていたことがすべてキャンセルとなった人も多いだろうが、それによって感じたのは解放感ではなく、妙な圧迫感だったのはこういうことなのかもしれない。
何が正解かは分からないけれど、朝はニュースは聞かずに音楽だけにする、など、限定されてしまった生活がこの事態一色に塗りつぶされないようにしている。
人との繋がりの重要性を知る
また、これまでは「仕事上の私」や「子供の学校の先生と接する私」、「義理の母に対する私」など、いろいろな種類の私がいた。それがあっという間に「家庭内の私」だけに集約されてしまったのである。閉じ込められた感覚はここからも来ているのかもしれない。
例えば、子供を学校へ送り、日中は仕事をする。そして時には友人とご飯を食べに行く。仕事が終われば母親となり、週末は家族と過ごす…。そんなごくごく当たり前の生活を今改めて振り返ると、いろんな場所でいろんな対人関係を築いていたことに気づく。ロックダウンは身体的に移動が制限されるということだけれど、実は同時に社会的な関係も一気に縮小しているからこそ、閉じ込められた感覚になるのだと思う。