友達を失ったぼくに祖母が言ったひとこと

泣きそうになりながら帰宅したぼくを見て、祖母が「なにかあったの?」と尋ねた。なにから説明すればいいのかすらわからず、ぼくはただ、カツヤくんの言葉をひとことずつ繰り返した。

すると祖母は、忌々しそうな表情を浮かべ、こう言い放った。

こっちから願い下げだよ。あそこの家は地獄に落ちるんだから。二度と近づいちゃダメだからね

 

どうしてそんなことを言うの? 喉元まで出かかった言葉を、ぼくはそのまま飲み込んだ。反論したって、神様の存在を否定するカツヤくんたちが悪者にされるに違いない。祖母の口から、大切な友達を罵倒する言葉は聞きたくなかった。ぼくは「わかった」と頷き、自分の部屋へと駆け込むしかなかった。

祖母は、たとえそれがぼくの友人の家族でも、宗教を信じないとわかれば激しく罵倒する。そして友人家族からも拒絶される。そんな辛いことはなかった Photo by iStock

以降も、「宗教を信仰していること」を理由に、友達を失うことがあった。そうやって増えていく理不尽な傷を眺めては、ぼくのなかで信仰に対する疑問が生まれていった。

信仰を理由に、関係を拒絶される。それは幼い子どもにとって、どれほどの深手だろうか。それでも祖母は、「そんな人たちと仲良くする必要なんてない」と言い切った。

子どもの世界はひどく狭い。友達をひとり失うことが、想像以上の傷になる。いつか祖母に話そうと思っていたけれど、結局そんな機会はなく、彼女はこの世を去ってしまった。

【次回は5月6日(水)公開予定です】

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