それでもケアをしていれば自然に治るのならいいのですが、実際のところはどうなのでしょうか。気になるところを専門医がエビデンスとともにお答えします。
7割は治る。でも残りは……
小児期のアトピー性皮膚炎は生後6ヵ月までに45%、1歳までに60%に最初の症状がみられたという報告があります※1。
つまり小児期のアトピー性皮膚炎は乳児期に発症することが多いわけで、親御さんにとって関心が高い病気だと思います。
※1) Illi S, et al. J Allergy Clin Immunol 2004; 113:925-31.
このアトピー性皮膚炎について、乳児期に発症したときに「だんだん良くなって治るから大丈夫」と言われていることも多いようです。
では、小児期のアトピー性皮膚炎は、本当に自然に治るといってもよいのでしょうか?

イタリアにおける、6~36ヵ月の252人を20歳まで追跡調査したコホート研究では、6歳までにアトピー性皮膚炎の60.5%は寛解したと報告されています※2。
※2)Ricci G, et al. J Am Acad Dermatol 2006; 55:765-71.
そして、台湾で生まれ、2歳までにアトピー性皮膚炎を発症した小児1404人の経過をみていくと、69.8%は寛解したと報告されています※3。
※3)Hua TC, et al. Br J Dermatol 2014; 170:130-5.
ただ、これらの結果を見てみると、イタリアからの報告も、台湾からの報告も10歳前くらいでアトピー性皮膚炎から離脱する子どもはほぼなくなり、横ばいになっていることが読み取れます。
すなわち、10歳前後からはアトピー性皮膚炎から離脱が難しくなってくるといえるようです。
実際に、小児期以降にアトピー性皮膚炎が残り続けるかどうかを検討した7つの研究(13515人)からは、12歳以降26歳までの有病率の低下はほとんどなかったという結果でした※4。
※4)Abuabara K,et al. Allergy 2018; 73:696-704.
「治らない」要因は?
では、どのようなアトピー性皮膚炎が大人に持ち越しやすくなるのでしょうか?
たとえば、先に上げたイタリアからの報告では、軽症と判断された子どもより中等症から重症である子どものほうが、アトピー性皮膚炎の持続するリスクが高いことが示されています※2。
さらにデンマークでの検討で、13歳までアトピー性皮膚炎を持ち越しやすい要因が報告されています。
それによると、やはり診断時の重症度が高いほど持ち越しやすいようです。また、アトピー性皮膚炎の診断基準、すなわちアトピー性皮膚炎らしい特徴を多く満たしているほど、13歳時点でアトピー性皮膚炎が残っていることが報告されたのです※5。
※5)Thorsteinsdottir S, et al. JAMA Dermatol 2019; 155:50-7.
では、早めの治療は、そういった流れを断ち切ってくれるのでしょうか?