新型コロナで拡大するテレワークで、少子化も改善される理由

通勤は機会損失です
新型コロナウィルスの拡大防止のために、急速に取り組まれ始めたテレワーク。ジャーナリストの河合雅司氏は、少子高齢社会における問題解決のために、『未来の年表2』(2018年刊)で「テレワークを拡大する」ことを提言していた。このたびのコロナ禍を受けて河合氏が大幅加筆した緊急寄稿で、テレワークの必要性を改めて訴えた。これを読めば、「2020年代の日本」の働き方をどう変えざるを得ないかが分かるだろう。

通勤時間がもったいない

新型コロナウイルス感染拡大は長期化の様相を呈してきたが、その蔓延によって一気に進んだのがテレワークだ。利用者からは「会社の命令で仕方なくトライしたが、案外簡単にできた」、「思ったより仕事の効率が上がった」という前向きな評価の声も多く聞く。

完全収束までには数年かかるという見通しもあり、できることならしばらくは「満員電車」には乗りたくないというのが、多くのビジネスパーソンの本音だろう。企業にしたって、テレワークの社員が増えれば、そのぶん、通勤定期代などの抑制にもつながる。中長期的に考えたならば、オフィス面積も縮小できる。「コロナ後」も引き続きテレワークを認める職場は少なくないだろう。

こうした新型コロナへの感染回避という目的もさることながら、勤労世代が減る少子高齢化社会をにらんでも、在宅勤務の普及は不可避である

実際にやってみた人は分かったと思うが、テレワークとなれば、子育てや介護、家事など、社員は自分自身で一日のスケジュールを立てやすくなる。結果として、妊娠・出産に伴う不本意な退職や介護離職なども減らせる。

これまでテレワークといえば、子育てや要介護者を抱えた社員など福祉的な意味合いでとらえられる側面が強かったが、多くの人が利用したことで、企業の意識も大きく変わったはずだ。

通信業界の技術革新は日進月歩である。利用する人が増えればテレワークの安全性はもっと高まり、さらに使いやすくなるに違いない。コロナ禍を契機として、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方をさらに進めていきたい。

意識改革が必要

改めてテレワークを説明しておこう。ICT(情報通信技術)を活用することにより、時間と場所を有効に使える柔軟な働き方のことだ。雇用関係の有無により「雇用型テレワーク」「自営型テレワーク」に大別される。

雇用型テレワークはさらに、自宅で勤務する「在宅勤務」、会社のサテライトオフィス等で勤務する「施設利用型」、施設に限らず、いつでもどこでも仕事が可能な「モバイルワーク」に分類される。

新型コロナ感染拡大防止のためにも、在宅勤務が求められている(photo by iStock)

総務省の「情報通信白書」(2019年版)によれば、2016年9月末時点でテレワークを導入している企業は全体の19.1%だ。

同白書によれば、社員数2000人以上の企業では導入率が46.6%と、概ね規模の大きいところほど進んでいる傾向にあるが、コロナの感染拡大に伴って、政府は中小企業の導入支援に力を入れており、今後は小規模の事業所でも導入率の向上が見込まれる。

テレワークの普及には意識変革も必要だ。日本企業の場合、全員が顔を合わせて仕事することが大前提となっていることが少なくなかった。人々が集まって働いたり、物事を決めたりするという仕事の進め方は、さまざまなアイデアを生むという相乗効果が期待できるし、それ自体を否定するつもりはないが、責任の所在が不明確になっていることも多い。

顔を合わせれば、臨機応変に業務に対応できるという利点もあるが、同時に在宅勤務推進の妨げになっていることも事実だ。個人の職責や成果を明確にした業務プロセスを確立しさえすれば、勤務時間の柔軟運用や在宅勤務も図りやすくなる。こうした業務の在り方の大改革は、経営者が英断を下さなければ前進はしない。