2020.04.27
# 文学 # 社会

新型コロナをめぐる、日本人の危機意識の「ばらつき」について

現実となった『首都感染』②

雪まつり、ダイヤモンド・プリンセス号

「イベントの自粛」「全学校休校」要請の前段には、いくつかの「兆候」と言えるものがあった。

まずは札幌の雪まつりだ。1月31日から2月11日まで行われている。例年、約200万人以上の人を集める大イベントだ。

2013年の札幌雪祭り(photo by iStock)

1月25日、中国で春節が始まった日、武漢から来た中国人女性が感染していることが分かった。北海道での最初の感染者だ。

中国人団体客の来日が停止されたこともあり、前年度の273万人からは大きく減少した。それでも、約202万人の来場者があった。

結果的には、北海道では3月8日に、感染者が100人を超えた。知事が週末一律の外出自粛を促す、「緊急事態宣言」を出すに至っている。

「雪まつりで感染が拡大した可能性は完全には否定できないが、一方、現時点で裏付けるものもない」との声もあるが、運営側から感染者も出ている。

さらに大きな話題を呼んだのは、2月3日に横浜港に停泊したクルーズ船、ダイヤモンド・プリンセス号だ。

ダイヤモンド・プリンセス号(photo by iStock)

その日に行われたウイルス検査で31人中10人が陽性だったのだ。以後、日を追って感染者は増えていった。

国立感染症研究所の報告では、7日の発症者が最高で、クラスターの発生は2日と推測している。その日は船内で、乗客、船員が集まり、「さよならパーティ」が開かれている。

連日、マスコミは感染者の数と船内の様子を、推測を交えて伝えた。

日々増えていく感染者の数と巨大な豪華客船の姿は対照的で、新型コロナウイルスの象徴的な存在となった。

しかし、感染力の強いウイルスが発生している船内で、夫婦が同じ部屋にいれば、2人の感染は確実だ。

感染対策の経験者がDMATの一員としてクルーズ船に入ったが、1日で追い出されたような記事も読んだ。彼は、船内では安全、危険ゾーンの区別など、感染対策がほとんど取られていないことを述べていた。

初期のうちに、もっと集中管理の出来る広い施設に移すことも考えるべきだったのではないか。

強行された格闘技イベント

船内隔離が始まって2週間後の19日、約500人が隔離を解かれて自宅に帰っている。多くがバスで横浜駅まで送られ、公共交通機関で帰宅している。以後、数名の方が帰宅後発症している。

アメリカのチャーター機で帰国した人は、帰国後2週間隔離されている。

27日に全乗客が下船したが、最終的に、乗船客3711人中、感染者712人、死者14人を出した。その感染対策には、世界の評価は低かった。

やはり、最初から感染病対策の専門家がリーダーとなり、計画的に対応すべきだった。

この大量感染も、元をたどれば香港で下船した武漢出身の一人の男性から始まった。感染を防ぐには、早期の封じ込めしかない。

22日には、政府のイベント中止要請が出ているにもかかわらず、さいたま市で6500人規模の「格闘技イベント」が行われている。県は中止の意向を示したが、強行された。

イベントは強行された(photo by iStock)

マスクの配布、体温測定器の設置、会場の扉の開放、感染者が出た場合に感染経路をたどれるよう来場者に名前、住所、電話番号の提出を義務づけた。「最大限の予防策を講じた」と主催者側言う。しかし、興奮すると大声を上げたりマスクを外したりする観客もいたという。

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