2020.04.27
# 文学 # 社会

新型コロナをめぐる、日本人の危機意識の「ばらつき」について

現実となった『首都感染』②

この時点の世界での感染者は、約8万2600人、死者数約3000人だった

日本人の感染者は約919人だ。この中にはクルーズ船の感染者が含まれているので、202人だ。

感染は東京や大阪など、人口密度が高い大都市に集中している。その他の県では一桁か二桁の感染者数、ゼロの県もある。

やはり、ウイルスの感染は後で言われる「三密」で発生するのだ。だが、多くの日本人にとって、緊張感はなかったのだ。

ばらつく危機意識

実を言うと、僕の危機感も高いとは言えなかった

東京での集まり、授賞式の中止や延期のメールはいくつも入っていた。にもかかわらず、2月には神戸を中心に、沖縄、東京、岡山と行き来していた。

WHOが発表していた致死率の低さと、世界に比べて日本での感染者数が少なかったことが理由だ。

東京に行くときは、家から神戸空港まで車で行って、飛行機で羽田に飛ぶ。朝一番の飛行機だが満席に近い。ほぼ全員がマスクをして、会話はない。

神戸から東京に着くと、人の多さに圧倒される。いつもとさほど変わらない日常の姿だ。羽田も品川も、電車も相変わらず人は多い。

首都圏最大の感染源は「東京一極集中」で、避けなければならないのは、「電車のラッシュアワー」だ。特に電車はヤバい。マスクをして、押し黙って吊り革や手すりを握ったり、座っている乗客は、最大の危険の中にいる。

通勤ラッシュは最大の危険(photo by iStock)

ウイルスは、何もない所から湧いては来ない。だがもし、そこに一人の感染者がいれば――。

ウイルス自体については、我々一般国民は多くは知らなかった。過剰反応を示す者と、無関心な者とに分かれているような気がする。僕も現状がピークで、ひと月もすれば落ち着いてくると思っていた。

2月の終わりの時点での世界での感染者は、韓国、約3000人、イタリア、約1000人、フランスとドイツは100人以下。アメリカは70人だった。トランプ大統領も楽観的なことを言っている。

目に見えないモノに対しては、人は必要以上に恐怖を抱く。ウイルスは放射能に似ていると思う。

マスク不足やトイレットペーパーの買い占めは、その表れだろう。もっと、「新型コロナウイルス」そのものを知って、冷静になることが重要だった。

不安が買い占めを起こす(photo by iStock)

動き始めたハリウッドプロジェクト

3月に入った。

1日には東京マラソンが行われている。市民ランナーの参加は中止して、選手のみが参加している。オリンピックの選手選考がかかっているので、中止はできなかったのだろう。観客は7万人。この日、日本新記録が出ている。

この時期になっても、総理は、「オリンピックとパラリンピックについては様子を見て決める」と、やる気満々なのには正直、呆れていた。この引き延ばしが、中止ではなく、来年への延期につながったのであれば、何とも寂しい。IOCの幹部の見識を疑う。新型コロナウイルスは、イタリア、スペインを中心にヨーロッパにも感染が広がっていた。

「全小中高校休校」「東京マラソン実施」は対照的だが、決断を誤れば、大きな悲劇を生む。幸い、表に出るような「悲劇的なこと」が起こらなかったからよかったものの、これは運でしかない。

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