ところが、昔ながらの自然素材無添加石けんに含まれる界面活性剤は、インフルエンザウイルスの実験では、「石けん=界面活性剤の抗ウイルス作用の常識」を覆す働きをしていたのである。


広島大学大学院医系科学研究科(ウイルス学)教授、坂口剛正さん、北九州市立大学国際環境工学部教授の秋葉勇さん、そしてシャボン玉石けん研究開発部長の川原貴佳さんを中心とするチームは、自然素材無添加石けんの界面活性剤の抗ウイルス作用が、広く販売されている合成系ハンドソープの界面活性剤と比べ100〜1000倍も大きいことを明らかにした。
そこで、そのメカニズムの解明に取り組んだのである。
広島大学の坂口剛正さんはこう語っている。

坂口 ウイルスの外殻、エンベロープは脂質二重膜なので、当然、石けんで溶けます。
電子顕微鏡で見たところ、濃度が高い合成系界面活性剤ではウイルスはもとの形がわからないほどバラバラになっていました。これは、従来の知見通りです。
一方、自然素材無添加石けんの界面活性剤は、濃度が低くてもウイルスに穴をあけていました。それは、界面活性剤がウイルスの棘の部分、スパイクタンパクにとりつき、スパイクを引き抜いていることがうかがえました。驚くべき機能です。

断っておきたいが、濃度による効果に差はあるものの、合成系ハンドソープもインフルエンザウイルスを壊すことに変わりはない。だが、合成系と比べて自然系のほうが、壊し方がダントツに大きいのだ。
ノーベル賞候補からの教えを生かして
坂口 その壊し方の違いの解明に取り組んでくれたのが、共同研究者である北九州市立大学の秋葉勇さんとシャボン玉石けんの川原貴佳さんでした。