「認可外保育園退場論」がこのまま進めば、不自由・不平等が加速する

保育園のあり方を見直す時が来た

認可保育園のデメリットと認可外保育園のメリットを示すことで「認可保育園至上主義」に疑問を呈してきた本連載。

最終回となる今回は、保育園業界全体を取り仕切る、行政のスタンスに潜む問題点を指摘したい。(第1回第2回はこちら)

強さを増す「認可外保育園退場論」

筆者は何年か前、首都圏のある政令指定都市の保育施策担当者と意見交換したことがある。

その人物は、「保育施設たるもの、基本的にみな認可施設であることが望ましく、認可外保育園はいずれ廃止し認可保育園に転換していくべき」というのが持論だった。

行政に限らず、「認可保育園至上主義」を採るメディアや保護者たちの中にも、このように「認可外の施設はどんどん退場していくべき」と思っている人がけっこういるのではないだろうか。

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より環境のよい施設に変わっていくのだからいいことづくめだろう、と思われる読者もいるかもしれないが、話はそう単純ではない。

行政関係者の中には、「認可保育園には行政からの公費投入が手厚いので、そればかりが増え続けたら財政破綻まっしぐらだ」と冷静に考えている人も確かにいる。

しかし筆者が「認可外保育園退場論」に同意できない最大の理由は、そこではない。

 

保育サービスの提供手段が認可保育園に偏重していくことは、福祉の名のもとに自由な選択や競争を一切排除して、行政がすべて差配する「保育の社会主義化」につながり、決して望ましくないと考えるからである。

そう主張すると、そもそも保育の世界にははじめから福祉の要素が入っているのだから、もともと社会主義的だし、何がいけないのだと反論を受けそうだ。

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