「リターン100倍」の男
この混乱下でリターンを上げた投資家はいくつかのタイプに分けられます。
まず、ヘッジファンドの中ではマルチストラテジーと呼ばれる多様な投資対象に複数の戦略を使い分けるファームが健闘しています。マルチストラテジーの雄であるシタデルやミレニアム、バリアスニーといったファンドは揃って3月末時点で、年初来プラスのリターンをあげています。
グローバルマクロ戦略のヘッジファンドも、ブレバン・ハワードやロコスといった大手ファンドが3月に2桁%のリターンを上げるなど好調でした。
また、個別の取引で大きなリターンを上げたファンドもあります。著名なヘッジファンドマネージャーであるビル・アックマンが率いるパーシング・スクウェアは、約2700万ドル(約29億円)で購入したクレジット・デフォルト・スワップ (CDS)がマーケットの混乱で100倍近くの約26億ドル(約2800億円)にまで高騰し、ファンド全体でも3月に11%以上のリターンを上げて、年初来からのマイナスを打ち消しプラスにまで急回復しました。

CDSは債券のデフォルト時に損失が補填される契約で、債券の生命保険にも例えられます。平時にはデフォルトリスクがほぼゼロだった債券のCDS価格が、コロナショックにより急上昇したことが上記の巨額リターンに結び付きました。
このCDSはリーマンショック時にも危機を正しく予測していたヘッジファンドが、巨額のリターンをあげることに貢献しました。そして、リーマンショック時と同じく今回の危機時にも名をあげたのが「ブラックスワン」ファンドです。