母の友達を、祖母は汚い言葉で排除した
けれど、そんな関係は長く続かなかった。
いつものように母とアイさん、そしてぼくがお喋りで盛り上がっていたときのことだった。日が暮れはじめ、アイさんが帰る支度をはじめる。
「もう帰るの?」
「そろそろご飯の準備しなくちゃ。今度は息子も連れて遊びに来るね」
アイさんにはちょうどぼくと同じ年頃の子どもがいるという。ぼくと母は次の約束をしながら、玄関先までアイさんを見送りに出た。
そのとき、奥の部屋にいた祖母がやってきて、こう言ったのだ。
「もう二度とうちに来ないでちょうだい。あなたが来ると、この家に邪気が溜まるの」
その瞬間、アイさんの顔が凍りついた。なおも祖母は続ける。
「あなた××教でしょう。そんな人をうちに入れるわけにはいかないの」
それだけ吐き捨てると、祖母はぴしゃっと襖を閉め、奥にこもってしまった。

その場に沈痛な空気が流れる。なにか言わなくちゃ、と思うけれど、なにも言葉が出てこない。困ったような表情を浮かべるアイさんと、笑顔の消えた母。ぼくはふたりの顔を見上げては、暗い気持ちになった。
「……じゃあ、帰るね」
アイさんは眉根を下げて、出ていった。ぼくがアイさんの姿を見たのは、それが最後だった。