日本のクラスター対策は予防に特徴
まずクラスター対策について言えば、日本が保健所を中心にした地方の現場で、感染症を封じ込めていくための活動が積み重ねてきた伝統を持っていることは、大きな財産である。それは新型コロナウイルスへの対応のために生み出されたものではなく、むしろ結核のような古くから日本にある感染症への対応の中で、培われてきた伝統だ。
だがいずれにせよ地方の隅々にまで、職業意識が高く、経験則を持つ職員が配置されているために、新型コロナ対応においても、クラスター発生のたびに堅実な調査が行われてきた。もっともこの強みも、スマホの位置確認情報で感染者の行動を把握する韓国や台湾のようなアジア諸国と比べると、限界を見せる。
日本のクラスター対策は、誇るべきものだと思うが、世界で唯一の取り組み、といった誤解は過剰である。あるいは他のアジア諸国のほうが優れている面もある。
客観的に言って、日本のクラスター対策の特徴は、撲滅よりも、「予防」に貢献している点にあると思う。
4月10日の会見で、WHO(世界保健機構)は、日本のクラスター班の発見で「患者の5人に1人からしか、他人には感染させていないことが分かった」ことを称賛した。
この日本のクラスター班の大発見、つまり感染者(発症者)全員が等しく感染を広げるのではなく、クラスター化した感染が感染拡大をもたらすという発見があって、日本は「三密の回避」という強力な国民意識変容のためのメッセージを得ることができた。これはクラスター撲滅というよりも、クラスター発生を予防することを重視するアプローチだ。