コロナ調査でわかった「家族関係が良くなった人、悪くなった人」

在宅勤務緊急調査報告(2)
落合 恵美子, 鈴木 七海 プロフィール

家事をするほど幸せか

女性と男性が大きな違いを見せるのは「家事育児」だ。女性の2割が「在宅勤務になって良かったこと」として「家事育児」をあげている。

女性たちは「平日でも家事との両立が楽になった」「洗濯物や洗い物を溜め込まなくなった」「働きながら機械に任せられる家事が並行して片付く」など、苦労してきた家事と仕事の両立がしやすくなったことを喜んでいる。

子どもとの関わりについての女性のコメントは「子どもを急かすことなく、のんびり家で過ごせること」など、子どもと過ごすことそれ自体に高揚感をもつお父さんとは一味違う。家事育児は妻の役割という前提は揺らいでいない、とも言える。

「家事育児」の負担増は「在宅勤務になって困ったこと」としてもあげられる。詳しくは在宅勤務緊急調査報告(1)で述べたが、子どものいる女性の36%。休校・休園中の子どものいる女性の44%が、子どもの世話や休校中の学校から課された勉強の手伝い、家族の食事の準備などの負担増に困難を感じている。

めったに家で晩御飯を食べなかったお父さんが食卓に加わるようになったという嬉しい変化は、「子供の昼ごはんと夫の昼夜ごはんが増えた」という負担感と裏腹だ。この負担感と、家族が一緒で幸せ、家事ができて嬉しいという気持ちは、いったいどのような関係にあるのだろうか。

家事育児の負担増と家族関係の向上/悪化とをつなぐ回路は単純ではない。コロナ禍による「ステイホーム」で女性の3人に1人、男性の4人に1人が自分のする家事量が増加したと回答している。

配偶者と同居している人たち全体と比べて、そのうちの「自分のする家事量が増加した」と回答している人たちは、より高い割合で「家族関係」が良くなったと回答している(図4)。男女ともそうだが、男性の方がよりそのように感じている。家事や子どもとの関わりに自ら手間ひまをかけ、それが家族関係を良くしているという手応えを感じているのだろう。ふだんからもっと家族と関わりたいと思っていたのだろうな、と想像する。

しかし自分のする家事量が増加した女性は、「家族関係」が悪くなったと回答した割合も高い(図4)。男性はその傾向は見られないのだが。手間ひまかけた家族生活はみんなを幸せにするが、負担が集中する人は心の中に不満をためることもあるということだろう。そういえばお正月の人寄せも楽しいけれど、何日目かには疲れてくるものだ。

家族団欒の雰囲気を壊さないように家族には言わないかもしれない女性たちの心情は、本調査の自由回答に吐露されている。「在宅勤務と聞いて、子供を少しは頼めるかと思ったが、単に家で仕事のみをするだけ」「ぎすぎすするのもつらいしと私が我慢していることは多く、いろいろな意味でイライラします」。

関連記事