コロナ禍のインドネシアを脅かすもう一つの「見えない敵」

テロ組織MITの動きが活発化している
大塚 智彦 プロフィール

コロナ禍は「神が与えし戦士」

そうした状況の中でコロナウイルス感染が拡大するに従い、政府の感染対策に警察や国軍までが動員される事態になっている。

MIT幹部らは「このコロナ禍は神が与えし軍隊であり、イスラム国家建設に敵対する勢力を打ち砕く戦士である、ととらえてテロ活動の活発化と同時にメンバー獲得のリクルート活動に重点を移しつつある」とIPACの報告書は分析している。

報告書ではさらにMITは「コロナは信仰に篤くない者らを感染させるだけでなく死に至らしめると同時にイスラム国家に敵対する国である米英豪トルコ、サウジアラビア、イランそしてインドネシアの経済を弱体化させている」との立場からコロナ禍を好機ととらえ、MIT指導者のアリ容疑者は出回っている動画の中で支持者やメンバーに対して「真の勝利は近い。圧制者はコロナと戦闘によって倒される。神の意志は間もなく実現される」と訴えていることが報告されている

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こうしたMITの動きは3月27日に中部スラウェシ州ポソ近郊で救援物資輸送中の警察部隊への攻撃、4月8日には治安部隊のスパイとして拉致した農民の斬首、4月15日のポソ市内の銀行前での警察官襲撃と武器奪取未遂事件、4月19日のポソ近郊での農民殺害などの最近のテロ事件続発という活動活発化に繋がっているとみている。

MITの主な活動拠点はポソを中心とした中部スラウェシ州だが、同州は以前から山中のジャングルに既存のテロ組織が密かに運営する軍事訓練キャンプがあることで知られ、治安当局による捜索、摘発作戦も何度か行われたことがある。

 

しかしその後も場所を転々としながら、現在でもそうした秘密訓練施設が設けられているとされ、フィリピン人テロリストや中東から転戦してきた元ISメンバー、中東に渡航してISに合流しようとして阻止されたウイグル人や東南アジア各国のテロリストらが集結して、武器の扱い方から爆弾の製造法、自爆テロ実行法などの訓練を継続しているといわれている。

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