「早急に消毒の作業をしてもらいたいんですが…」
5月の初頭——。横浜で「ゴミ屋敷状態」のアパートの清掃をしていた特殊案件施工士の及川徳人さん(45)のスマホが鳴った。
電話の相手は、以前からよく知る不動産管理会社の担当者だった。
「及川さん、実は急な話なんですが、うちで管理している団地で新型コロナの感染者が出てしまいまして。そこで、早急に消毒の作業をしてもらいたいんですが……」
聞くと現在の現場からさほど遠くない場所だった。及川さんは、その現場の仕事を他のスタッフに任せ、アシスタントを連れて現場に急行した。
現場に行ってみると、電話をかけてきた担当者が不安げな面持ちで出迎えてくれた。
そこは、3階建ての団地の1階の部屋だった。その部屋のドアは、すでに管理会社によって密閉され、ドアにはテープが貼り付けてあった。

この部屋の住人に新型コロナの症状が出て、搬送された病院で検査の結果「陽性」とわかり、その情報が病院を通じて管理会社に届いたのだ。
室内には当分誰も入れない。中の洗浄も必要となるのだが、現在のところ感染を防ぐために密閉するしかない。