「毎月1万円でも納めて」
暗号資産が暴落を始めていた最中、樋口さんが新たな暗号資産への乗り換えを行ってしまったのは、'18年2月のことだった。
千葉市幕張で開催されたビジネスセミナーに参加した際、「PumaPay(プーマペイ)」という「ICO」案件を紹介された。ICOとは、「新規仮想通貨公開」と言われ、新たな暗号資産を発行し、資金調達を行うことを指す。簡単に行えるため、詐欺案件も多い。
樋口さんはセミナーの数日後にはその購入に向けて、手持ちのエイダのほぼ全額を他の暗号資産イーサリアムに乗り換えた。樋口さんが解説する。
「プーマペイはイーサリアムでしか購入できなかったからです。当時の私はイーサリアムを保有しておらず、必要なイーサリアムの購入資金も不足していた。そこで、手持ちのエイダ約1600万円分をまずイーサリアムに交換し、さらにそれをプーマペイと交換しました。

暴落の最中とはいえ、エイダにはまだ含み益があり、イーサリアムに交換した時点でかなりの課税所得が発生したのですが、当時の私は『換金した時だけ課税される』と信じ込んでいました」
樋口さんを追い詰めたきっかけは、自身の税務知識の乏しさだった。前述したセミナーで入手した暗号資産関係のソフトの購入費を、家業の手伝いで得た事業収入の経費に計上したのが発端だ。その結果、'18年分の所得が約170万円の赤字となり、所轄の税務署に疑念を持たれてしまったのだ。
税務署の調査官が自宅にやって来たのは、'19年10月のことだった。