不寛容が形になった幟旗
「地域住民の安全を守れ」
「子どもたちの安全を守れ」
庭付き一戸建ての家々が建ち並ぶ横浜市都筑区の住宅街。その一角に、こう書かれた黄色い幟旗が立ち並ぶようになって、もう1年以上になる。
この幟旗は、同地に建設された精神障害者向けグループホームに反対する住民が立てたものだ。障害者をまるで犯罪者か凶暴な獣でもあるかのように危険視する、「ヘイト幟旗」と言う他ない。

住民たちは、旗の撤去を求める横浜市の説得に応じない。精神障害者への理解を得ようと、今年設立された神奈川精神医療人権センター(通称KP)が始めた各戸訪問も、「こんなことをしても何も変わらないよ」と、どこふく風で受け流す。
住民の話を聞いたKPのピアスタッフは言う。
「話がまるで噛み合わない。あの人たちの世界には、精神障害者はいてはいけないようなのです」
コロナ騒動をきっかけに、これまで明るみに出なかった差別意識や偏見、加害意識が次々と露呈している。だが、精神障害者への差別は今に始まったことではなく、理不尽な扱いを露骨に受け続けてきた。心身の状態や境遇が異なる他者に対して、人間はどこまで不寛容になれるのだろうか。