緊急事態宣言が全面解除され、学校再開の動きが全国的に始まっている。3月2日から長期にわたる休校で教育の遅れを心配する声も未だ多い。
ジャーナリスト島沢優子さんによる連載「子育てアップデート~子どもを伸ばす親の条件」。今回はこの休校中の時間を利用し、興味あるものを大きな形にした小学生と、そのお母さんについてお伝えする。
クラウドファンディングで目標額の2.5倍
新型コロナウイルス感染拡大で発令されていた緊急事態宣言が5月25日、全面解除された。長かった自粛生活、皆さんはどう過ごされただろうか。振り返れば家族で濃厚な時間をともにできたし、家の模様替えをするなど悪いことばかりでもなかった、という声も少なくない。
とはいえ当方、息子が発熱と味覚障害を訴え肝を冷やしたりと、大慌てしたこともあった。数々の著名人が亡くなられ、感染症の恐怖を味わったのも事実だ。
そんなコロナ禍というピンチを、チャンスに変えた男の子がいる。
東京都に住むレウォン君。小学5年生になったばかりの少年は3月から4月の休校中、自身が考案した「元素カルタ」を完成させ、なんと商品化にこぎつけた。そのためにクラウドファンディングで集めた支援金は、5月29日現在で総額199万35円。募集終了まで残り9日を残しながら、目標額だった75万円の2・5倍超のお金を集めてしまった。
水素からラジウムまでの元素の「身近な用途」と、その解説が記載されている読み札が75枚、レウォン君手描きの絵札が225枚の計300枚。ひとつの元素に対して、三つの用途が解説されている。市販の商品にも元素カルタはあるが、例えば、「マグネシウム」を「とうふを作るときに使うにがりの成分です」などと、身近なものと元素をつないだものはオリジナルのものだという。
しかも、正確性を担保するために、東京大学サイエンスコミュニケーションサークル「東大CAST」に監修を依頼した超本格派の学習カルタなのだ。


この時点で支援者は318人。これだけの人たちのハートをとらえたのは、10歳の少年の描くイラストの温かさ、そしてカルタに漂う元素への「愛」だろう。
「元素って一見難しそうだけど、僕たちの生活のいろんなところにある。僕は授業で学んだら、すごくおもしろかった。みんなに楽しみながら元素を知ってほしいと思った」とレウォン君は目を輝かせる。